[連載]人生100年時代を賢く生きる「心とお金の老年学」
第6回 資産の「使い方」が、人生の豊かさを決める
そのお金、いつ、何のために使いますか?
長い間働き、節約し、投資を続けてきたあなた、またはこれから投資を始めるあなたに、まず問いかけたいことがあります。
「そのお金、いつ、何のために使いますか?」
多くの方はすぐに答えられません。
「将来が不安だからもっと貯めないと」「万が一のために」と思いながら、気づけば“貯めること自体”が目的になってしまうこともあります。
老年学では、お金は持っているだけでは「数字」にすぎず、使って初めて“人生の喜び”に変わる資産になると考えます。
今回は、難しい計算式ではなく、「貯めるモード」から「人生を彩るモード」へと、しなやかに心を切り替えるための知恵についてお話しします。
なぜ「使うこと」に抵抗を感じてしまうのか?
私たちは長年、
- 貯める=良いこと
- 使う=減ること
という価値観で生きてきました。
特に投資経験が長い人ほど、複利の力を知っているため、「今使うと将来の利益を失うのでは」というブレーキがかかりがちです。
しかしジェロントロジー(老年学)では、 本当に価値があるのは「残高」ではなく、「お金で得た経験」だと考えます。
70代、80代になったとき、あなたを笑顔にするのは、 証券口座の数字ではなく、大切な人と過ごした時間や、美しい景色の記憶です。

「思い出の配当」を最大化するという考え方
老年学には、「時間には主観的な価値がある」という考え方があります。
同じ10万円でも、使う時期によって“得られる喜びの質”が変わります。
- 元気な時期の10万円 体験の幅が広く、五感で味わう楽しさが大きい
- ゆったり過ごす時期の10万円 無理をせず、自分に合ったペースで深く味わえる
どちらにも、その時期ならではの価値があります。 ただ、体験できる選択肢の広さという点では、元気な時期に軍配が上がります。
だからこそ、 「いつか」と思っていることを少しだけ前倒しにすると、 その後の人生で何度も思い返せる“心の配当”が増えていくのです。
心をラクにする「収穫のコツ」
資産を使うのが不安な人のために、老年学が提案する3つの工夫です。
① お金に「名前」と「期限」をつける
例: 「この300万円は5年間の旅行費。使い切ることが目標」
目的を決めると、脳の「減るのが怖い」という警戒が弱まります。
② 元本は守り、「果実」だけを使う
元本を減らすのが怖いなら、 配当金や運用益だけを“使う”ルールにする。
「木は育て、果実だけいただく」イメージです。
③ 一気に変えず、少しずつ慣らす
いきなり大きく使う必要はありません。
- 趣味の予算を少し増やす
- 年に1回、資産の1%を“特別な時間”に使う
など、その時々で変えるのがポイントです。
最後に残るのは「モノ」ではなく「物語」
人生の最終章で人が語るのは、
- いくら稼いだか ではなく
- 誰と、どんな時間を過ごしたか
です。
お金を上手に使うことは、 あなたの人生という物語を豊かに書き進める行為です。
守りすぎて「今」という二度と戻らない時間を犠牲にするのは、ジェロントロジー(老年学)の視点から見れば、一つの大きな「損失」となり得ます。
結び:自分への「最高の仕送り」を始めよう
あなたは長い間、未来の自分のために積立を続けてきました。 今のあなたがあるのは、過去のあなたが頑張ったおかげです。
そろそろ、 「過去の自分からのギフト」を受け取ってもいいのではないでしょうか。
今日、何かひとつ、 “自分を喜ばせるためのお金の使い方”をしてみてください。
それは、人生を豊かにする「最良の再投資」になります。
【連載案内】
このコラムは「心とお金の老年学」シリーズです。
年齢とともに変わる判断力やお金との向き合い方を、ジェロントロジー(老年学)の視点から考えていきます。

