第6回 貯める才能、使う知恵 ― 人生を豊かにするお金の使い方

[連載]人生100年時代を賢く生きる「心とお金の老年学」

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資産の「使い方」が、人生の豊かさを決める

そのお金、いつ、何のために使いますか?

長い間働き、節約し、投資を続けてきたあなた、そしてこれから資産形成を始めるあなたに、まず問いかけたいことがあります。

「そのお金、いつ、何のために使いますか?」

すぐには答えが浮かばない方もいるかもしれません。

「将来が不安だから、もっと貯めておきたい」「万が一に備えたい」と考えるうちに、いつの間にか“貯めること自体”が目的になってしまうこともあります。

けれど、お金は残高として持っているだけでなく、暮らしを支えたり、やりたいことを実現したり、大切な人との時間に使ったりすることで、その役割を果たします。

今回は、「貯めること」だけに目を向けるのではなく、これからの人生のために「どう使うか」という視点から、お金との付き合い方を考えてみます。

なぜ「使うこと」に抵抗を感じてしまうのか?

私たちは長い間、

  • 貯める=良いこと
  • 使う=減ること

という感覚を持ちながら暮らしてきました。

特に資産形成を長く続けていると、積み上げてきた資産が減ることに、不安を感じることもあります。

「今使ったら、将来足りなくなるのではないか」

そう考えるのは、決して不自然なことではありません。

一方で、ジェロントロジー(老年学)の視点から人生を長い時間軸で考えると、お金の価値は、残高だけでは測れないことにも気づきます。

健康状態や生活環境、家族との関係などは、年齢とともに変化していきます。だからこそ、「いつか使う」だけではなく、自分にとって価値のあることに、いつ使うのかを考えることも大切です。

旅行や趣味、大切な人と過ごす時間など、お金を使ったことで得られる経験は、その後も思い出として残ることがあります。す。


「思い出の配当」を最大化するという考え方

老年学には、「時間には主観的な価値がある」という考え方があります。

 同じ金額でも、いつ、何に使うかによって、得られる経験は変わります。

例えば、体力があり活動の幅が広い時期だからこそ楽しめることがあります。
一方で、年齢を重ねてから、時間に余裕を持ってゆっくり味わえる楽しみもあります。

どちらが優れているということではありません。

大切なのは、「いつか」と先送りするだけではなく、自分がその経験を楽しめる時期についても考えてみることです。

旅行に出かけたり、新しいことを学んだり、大切な人との時間を過ごしたりする。

そうした経験は、その瞬間だけで終わるものではなく、後から何度も思い返すことがあります。

それを「思い出の配当」と考えるなら、お金を使うこともまた、人生を豊かにするための一つの選択といえるのではないでしょうか。

心をラクにする「収穫のコツ」

資産を使うことに不安を感じる場合は、いきなり大きく取り崩すのではなく、自分なりのルールを決めてみる方法があります。

① お金に「名前」と「期限」をつける

例えば、

「このお金は、これから5年間の旅行や楽しみのために使う」

というように、資産の一部に目的を持たせます。

「何のためのお金なのか」が分かると、貯め続けるだけではなく、使う時期についても考えやすくなります。

② 「使ってよいお金」をあらかじめ分けておく

「元本は守り、運用益だけを使う」と一律に決める必要はありません。

運用益は毎年安定して得られるものではありませんし、資産全体の状況や今後必要になるお金によって、適切な取り崩し方は変わります。

そこで、生活に必要なお金や将来への備えとは別に、「自分のために使ってよいお金」をあらかじめ考えておく方法があります。

使うためのお金と、将来に備えるお金を分けて考えることで、必要以上に不安を感じずに使いやすくなります。

③ 一気に変えず、少しずつ慣らす

いきなり大きな金額を使う必要はありません。

例えば、趣味や旅行の予算を少し増やしたり、毎年一定額を「楽しむためのお金」として確保したりする方法もあります。

大切なのは「何%使う」と一律に決めることではなく、自分の資産や暮らしに合わせて、無理のない範囲で調整していくことです。

最後に残るのは「モノ」ではなく「物語」

人生の豊かさは、資産額だけで決まるものではありません。

どこへ行ったか。
何を経験したか。
誰と、どんな時間を過ごしたか。

お金は、そうした時間や経験を支えるためにも使うことができます。

もちろん、将来への備えは大切です。

けれど、将来を心配するあまり、今しかできないことまで諦めてしまう必要はありません。

「将来に備えること」と「今を楽しむこと」の間に、自分なりのバランスを見つける。

それも、人生の後半に向けたお金との付き合い方の一つではないでしょうか。

結び:自分への「最高の仕送り」を始めよう

これまで未来の自分のために、少しずつお金を貯め、資産を育ててきた方も多いでしょう。

その積み重ねは、将来への備えであると同時に、未来の自分がより自由に選択するために準備してきたお金でもあります。

だからこそ、ときにはその一部を、今の自分のために使うことも考えてみてください。

旅行をする。
好きなことを学ぶ。
大切な人との時間を楽しむ。

使い方に一つの正解があるわけではありません。

大切なのは、貯めることだけを目的にせず、「何のために貯め、何のために使うのか」を自分なりに考えること。

お金を貯める力と、納得して使う知恵。

その両方が、これからの人生を支えてくれるのではないでしょうか。

【連載案内】

このコラムは「心とお金の老年学」シリーズです。

年齢とともに変わる判断力やお金との向き合い方を、ジェロントロジー(老年学)の視点から考えていきます。

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