若い頃は、欲しいものが次々とあったのに、年齢を重ねると「もう、それほど欲しいものはない」と感じることがあります。
一方で、以前は興味のなかった旅行や習い事に、思いがけず夢中になる人もいます。
お金に対する意欲は、年齢とともに小さくなるのでしょうか。
老年学には、年齢を重ねるにつれて、人が何に価値を感じ、どのように時間を使おうとするのかを考える研究があります。
その一つが「社会情動的選択性理論」です。少し難しい名前ですが、人生の残り時間を意識するようになると、人は将来のための新しい経験や知識だけでなく、今の自分にとって意味のある人間関係や、心が満たされる時間を大切にする傾向がある、という考え方です。
たとえば、遠方への旅行よりも、親しい友人と近くの美術館を訪れる方が楽しく感じられることもあるでしょう。
これは、単に体力が衰えたからではありません。何に喜びを感じるか、その優先順位が変わってきたとも考えられます。
では、投資への意欲はどうでしょう。
若い頃は資産を大きく増やすことに関心があった人も、年齢を重ねると、運用成績より資産を安定的に管理することを重視するかもしれません。
反対に、退職後に時間ができ、経済ニュースを読むことや少額の投資を新しい楽しみにする人もいます。
金融老年学の視点では、年齢だけで投資の向き不向きを決めるのではなく、資産状況や生活設計、本人の関心などを合わせて考えることが大切です。
もちろん、投資には損失の可能性もあり、無理に始めたり続けたりする必要はありません。
年齢を重ねることは、意欲がなくなることではなく、意欲の向かう先が変わることなのかもしれません。
今の自分は、何に時間を使いたいのか。何にお金を使うと心が満たされるのか。
そんな問いから、これからの暮らしを考えてみるのもよいのではないでしょうか。

