「もう60歳だから、投資はやめたほうがいいですよね」
こんな言葉を聞くことがあります。
でも私は、「60歳」という数字だけで、投資を続ける、やめるを決めなくてもいいのでは、と思うんです。
考えてみれば、同じ60歳でも暮らしはずいぶん違います。まだ仕事を続ける人もいれば、退職して年金生活に入る人もいる。これから住宅にお金をかけたい人もいれば、旅行や趣味を楽しみたい人もいます。
そして何より、人生100年時代。
60歳から先にも、思っている以上に長い時間があります。
金融老年学(ファイナンシャル・ジェロントロジー)がおもしろいのは、こうしたお金の問題を「何歳だから」と年齢だけで考えないところです。
年齢を重ねると、収入や健康状態、家族との関係、お金を使う目的、そして判断のしかたも少しずつ変わっていきます。
だから、お金との付き合い方も、その変化に合わせて考えていく必要があります。
たとえば、数年以内に使う予定のお金まで値動きのある資産に置いておくのは心配です。
一方で、当面使う予定のないお金まで、60歳や65歳になったからといって、すべて運用をやめる必要があるとも限りません。
私は「投資を何歳でやめるか」より、このお金は、いつ、何のために使うのかを考えるほうが大切だと思っています。
生活のためのお金。近いうちに楽しむためのお金。もう少し先まで置いておけるお金。
そんなふうに分けて考えてみると、「全部続ける」「全部やめる」の二択ではなくなります。
投資を少しずつ減らす人がいてもいい。必要な分を取り崩しながら、残りは運用を続ける人がいてもいい。もちろん、安心を優先して投資を終える人がいてもいい。
投資には、みんなに共通する「○歳定年」はないのだと思います。
大切なのは年齢そのものより、これから使うお金と、まだ先まで置いておけるお金を、自分の暮らしに合わせて考えること。
「もうこの年だから」と決めてしまう前に、一度、自分のお金の行き先を考えてみる。
それも、人生後半のお金との付き合い方の一つではないでしょうか。

